先に目を逸らしたのは、楓さんの方だった。


「……キレーだね、野乃ちゃんの()って」


ポソッと呟かれた声は、空耳かと疑ってしまいたくなるほど、小さくて。


(ほう)けていたら、フッと笑みを漏らした楓さんが言った。


「……あー見えて、大事なイモートだから。藍のこと、大事にしてくれるって約束するなら、教えてあげてもいーよ」


「も、もちろんです!」


「藍が野乃ちゃんのこと裏切ったりしても?」


「……藍ちゃんが、もしそんなことするとしたら……なにか絶対、理由があるので。それに私、藍ちゃん大好きなので!」


「……はは、そっか」


“じゃ、いーこと教えてあげる”
そう耳元で囁かれる。


くすぐったい感覚のせいか、ドキドキした。