「…来て」


「え…」


校舎を出て、芦名くんに腕を引かれたまま裏門に来た。


裏門とは名ばかりで、実際には、錆びきった門は開かないし、よくわからない植物が蔓延っているし、使われていない。


「あ…足りない」


「え…なにが?」


「ヘルメット。ちょっと届けてもらおう」


「え…?」


私が質問し終わる前に、芦名くんは誰かに電話をかけはじめた。


「……俺だけど。ヘルメットひとつ持ってきて。新しいやつ。……うん、そう。早く来て。追われてるから」


さっきも言ってたけど。


“追手”だとか“追われてる”とか。


ちょっと不安になる言葉ばかり聞こえて、怖くなる。


芦名くんはきっと、“住む世界が違う人”なんだと、思い知らされる。


電話を切った芦名くんが、こっちを向いた。


反射的に、ビクッとしてしまう。


そんな私を見た芦名くんが、苦笑して。


「やっぱり怖い?俺のこと」