…だってなんか、いつも見かけるニコニコしてる芦名くんとは全然違って落ち着かないのに、これ以上関わるなんてことになったら…。


ダメだ、考えただけで頭壊れそう。


「話はあとで。ここにいると、たぶん追手が来るから。安全なところに移動しよう」


「あ、安全なところ……!?」


つまりここは、安全じゃないところってこと…!?


あたふたしているうちに、私の返事も聞かないまま、腕を引っ張られて。


「…っ、」


はじめて感じた男の子の力にドキッとした。


掴まれている手首がなんだか熱い。


そういえば今気づいたけど、芦名くんは荷物を持っていなくて。


恰好も、昼間はいつもきちんと制服を着ているのに、今はトップスはパーカーに変わってるし。


なにより、不意に吹いた風でなびいた黒髪の下に──ピアスの穴があいていて。


芦名くんには、“みんなが知らない姿がある”と確信してしまった。