また、だ。


『野乃のこと“は”見捨てない』


それは、裏を返せば

──“私以外の人が泣いていても見捨てる”と、いうこと。


嫌でもわかってしまう。


学校での芦名くんは、やっぱり作り物なんだということ。


「……まあ、泣き顔の野乃も可愛いから、俺的には少し得したような気分にもなるけど」


「…………芦名くん、発言がチャラいよ」


「野乃にだけだよ、こんなこと思うのは」


「……ずるい、」


また、私は勘違いしてしまう。


そんなこと言われたら、芦名くんの“好きな人”になれてるんじゃないかって、期待してしまう。


「なにが?」


「……期待、させるの……ずるい」


「野乃、期待してるの?」


「……っ!」


墓穴掘った……かもしれない。


これじゃあ、「芦名くんのことが好き」って言ってるみたいに……。


「真っ赤。かわいい」


「そ……んなこと……」


「その表情(かお)は、俺だけのモノだから」


──その瞬間、唇が優しく触れた。