芦名くんの隠しごと




*



放課後。


『昨日の裏門で藍が待ってるから。教室からみんながいなくなってから、最初だし一緒に会おうか』


芦名くんが屋上から去るとき、思い出したようにそう言って。


クラスメイトがぞろぞろと帰っていく中、私は本を読むフリをして、芦名くんと二人になるのを待っている。


あ、ちなみに屋上でのことは、芦名くんが上手く誤魔化してくれたらしく、誰にも何も聞かれなかった。


……ランさんって、どんな人なんだろう。怖い人じゃないといいけど。


でも、女の子って言ってたし、周りに同じ性別の子がいるって思っただけで、心強いかも。


「……野乃」


「ひゃい!」


ぼんやりとしていたら、急に耳元で声をかけられて、思わず変な声が出てしまった。恥ずかしい。


というか、いいのだろうか。学校でこんなに堂々と下の名前で呼ぶなんて。


そう思って周りを見てみると、いつの間にかクラスメイトたちはいなくなっていて。


教室には、私と芦名くんの二人きり。