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放課後。
『昨日の裏門で藍が待ってるから。教室からみんながいなくなってから、最初だし一緒に会おうか』
芦名くんが屋上から去るとき、思い出したようにそう言って。
クラスメイトがぞろぞろと帰っていく中、私は本を読むフリをして、芦名くんと二人になるのを待っている。
あ、ちなみに屋上でのことは、芦名くんが上手く誤魔化してくれたらしく、誰にも何も聞かれなかった。
……ランさんって、どんな人なんだろう。怖い人じゃないといいけど。
でも、女の子って言ってたし、周りに同じ性別の子がいるって思っただけで、心強いかも。
「……野乃」
「ひゃい!」
ぼんやりとしていたら、急に耳元で声をかけられて、思わず変な声が出てしまった。恥ずかしい。
というか、いいのだろうか。学校でこんなに堂々と下の名前で呼ぶなんて。
そう思って周りを見てみると、いつの間にかクラスメイトたちはいなくなっていて。
教室には、私と芦名くんの二人きり。



