芦名くんの隠しごと




……だから、とか

意味わかんないし。


だけど、芦名くんは少し寂しそうな顔をしていたから。


「……いーよ」


きっと昨日、助けてくれたんだし。


私も芦名くんの力になりたいなって、思ったの。


「ありがと、野乃」


そう言って笑った芦名くんは、本物に見えて。


自然と私まで、笑顔がこぼれる。


「じゃあ、そろそろ戻ろっか。芦名が水上さんに変なことしてる~なんてウワサになっても困るし」


「ふふ、そうだね」


けど、誰もそんな想像しないんじゃないかな。……逆の想像ならされちゃうかもだけど。


「じゃあ野乃、先に戻ってるね」


「あ、うん!5分くらいしたら私も行くね」


「さっき渡した鍵、ここのスペアだから。戸締まりよろしく。あと、野乃もいつでもここ来ていいからね」


「あ、ありがとう!」


なんだかすごく、特別待遇されてるような。


あのときプリントを忘れただけなのに、私の運命は確実に変わってきていたのかもしれない──。