い、今。
「──あーあ、そんな目するなら、目ぇ開けちゃダメだよ」
驚いて思わず開けてしまった目は、涙が溜まっていた。
「そんな嫌だった?キス」
悲しいわけでも、嫌だったわけでもない。きっと、生理的なもの。
だけど、たった一瞬のキスで涙が出てしまうなんて、なんだか自分がかっこ悪く感じてしまう。
少し悪い方に表情を崩した芦名くんに向けて、“嫌じゃなかったよ”という意味を込めて、首を横に振る。
すると芦名くんは嬉しそうに目を細めて、今度はまた、私の唇に指で触れてくる。
それだけで、怖いくらいに心拍数が増える。
「……じゃあ、もう一回していい?」
なにを、なんて聞かなくてもわかる。
だけど、頷く勇気なんてない。
それでもなんとか返事をしようと口を開いたけれど、私が声を出すより先に、唇が再び重ねられた。
「……っ、ん」
だんだん甘くなる熱に、酔いしれてしまいそうで。
けれど、ボーッとして働かなくなってきた頭の片隅で、“恋人でもない人とキスしてる”という言葉がチラつき、反射的に芦名くんに抵抗してしまう。



