「孝也さん、野乃を怖がらせないでください」


「別に怖がらせたいわけじゃないよ」


大丈夫だよ、芦名くん。孝也さんが警戒する気持ちもわかる…わけではないけど、仕方ないなって思うから。


「それよりいいの?さっきから(かえで)が野乃ちゃんのこと睨んでるけど?」


カエデさん…?


芦名くんは軽くため息をついたあと、私に耳打ちした。


「…野乃、気をつけて」


もしかしたら、カエデさんが、芦名くんの言っていた“危ない人”なのかもしれない。ううん、きっとそうだ。


「野乃チャーン、僕も野乃チャンと“オハナシ”したいなー」


後ろから、気だるげな声が聞こえてくる。


それだけなのに、なぜかゾクリとして。


…危ない、って意味を私は甘く見ていたのかもしれない。怖くなって、すぐには振り向けない。


けれどなぜか、聞いたことあるような声がして。


芦名くんに、「俺もついてるから」と言われ、恐る恐る振り返る。