『“また”作り笑い』
つまり、康生くんは前から作り笑いしてるってこと……?
たしかに、さっき校舎の中で見た康生くんは、最初は誰なのかわからないくらい、怖い顔をしていた。
怖い顔、というより無表情で。どこか冷たいような表情だった。
普段はいつも、あんな表情なのだろうか。
不思議に思っていると、そんな私に気づいた夏樹くんが、私に向けて口を開いた。
「…俺と康生、中学までは同じだった」
「今、は…」
「俺は南高」
……南高って、ものすごい進学校だよね。
「夏樹くんって頭いいんだね」
「まあ、テストは毎回1位だけど。授業は聞いてねえ」
「ずるい…」
私なんて、授業を必死に聞いてても平均点ギリギリ取れるか取れないかぐらいなのに。
「ごめん、自慢」
「だよね」
なんて話して、笑い合っていると。
「……野乃、おいで」
いつの間にか笑いがおさまったらしい康生くんが、少しだけ低い声で、私を呼んだ。



