ただ、彼以外のクラスメイトは不思議そうな顔をしていたから、芦名くんのオモテに騙されていたのは、きっとわたしだけじゃない……たぶん。
長く一緒にいる彼だけが、薄々気付いていたんだと思う。
「……ありがとう、」
芦名くんが照れたようにはにかむから、なんだかわたしまで嬉しくなって、つい会釈をしてしまった。
「え、なに皮肉?怒ってんの?マジで怖いんだけど。逃げるよ俺」
「怒ってないから。そのままの意味。なんか嬉しくて」
きっと芦名くんは、誰にも気付いてもらえなかった“本当の自分”がいるってことを疑ってもらえて、嬉しかったんだと思う。
自分自身ですら、見つけたのは最近だったのに。
それよりも前に、隠しごとがあることを感じ取っていた彼は、わたしに負けず劣らずの芦名くん好きなんだろう。負けないけど。



