そのとき、母さんも夏樹の父さんも、はじめて彼の笑顔を見たんだ。
だけど、そんな矢先。おれが7歳のとき。
おれと母さんは、事故に遭った。
母さんは即死だった。
おれは無傷だった。
野乃のお父さんが、咄嗟におれのこと庇ったんだ。
たまたま近くにいたらしい。
そのころ、野乃のお父さんは、
夏樹の父さんに頭の良さを見込まれて、借金を利子なしで肩代わりする代わりに自分のところで働いてくれって頼まれて、
また野乃たちに会える日を夢見て頑張ってたんだ。
そんなときに起こったんだよ、この事故は。
彼は死ぬことは免れたけれど、記憶をなくしてしまった。
ひとりの人間の人生をダメにしたって意味では、……おれも人殺しなんだよ。



