芦名くんの隠しごと




「…芦名くん、って呼ばなければいいよ」


……それは、必然的に“康生くん”になるのでは?


「慣れるようにがんばるね」


「ほんとに?」


芦名くん、じゃなくて康生くん。


芦名くんじゃなくて康生くん。


……康生くん。


だから、近いってば…!!


「野乃、逃げないの」


そう言って、さらにキョリを詰めてくる康生くん。


このキョリだけは、慣れる気がしない。


恥ずかしくて、どうしても顔が赤くなってしまう。


「……かわいい」


「え…!?」


な、なんでそうなるの……?


「わかんない、って顔してる」


「…だって、わかんないもん」


それより康生くん、私の心読めるの…?


それとも、私ってそんなにわかりやすいのかな……?


「まーいっか。わかんなくても」


「そう、なの?」


「うん。そーだ、これ渡しちゃうね」


そう言って、渡されたのはヘルメット。