「───だから、アイツは怪しいと思ってたんだよ」


目が覚めると、消毒液の匂いがした。


懐かしい匂い。


楓の家の病院の匂いだ。


「………ん、楓」


「………康生、目ぇ覚めたんだ」


「ごめん、迷惑かけて」


……本当に迷惑をかけてしまった。


けれど夏樹は、まったく嫌そうな顔もせずに、冷静な顔で口を開いた。


「……こうなった原因に心当たりは?」


「ない」


俺が答えると、夏樹は「やっぱりな」とでも言うようにため息をついてから、もう一度こっちを真っ直ぐ見た。


「………月森」


「え?」


「お前が飲んだお茶、月森が淹れたんだろ」


「……そうだけど」


───なんとなく、わかってしまった。夏樹が何を言おうとしているのか。