『はじめまして。月森悟です』


穏やかそうな転校生のウワサは、芸能人ばりの顔立ちもあってか、瞬く間に広まった。


だけど最初、彼は誰とも関わろうとはしなかった。


おれも特に興味はなかった。


ただ、───時折見せる哀しい瞳が、妙に印象的だったことを覚えている。


そんなときだった。


「………なあ、康生」


「───伊織、」


密かに仲良くしている───花瀬伊織が、声をかけてきたんだ。


「お前んとこの学校に、月森悟っているか?」