「もしもし夏樹!?」


楓にしては珍しく焦ったような声が聞こえる。


その中に、微かに怒りが含まれていることに気が付いた。


「今どこ!?」


「………孝也さんとこ。藍もいる。康生は知らねえ」


外れてほしい、そんな一心で、震える声を誤魔化すように早口で言った。




「───ごめん、夏樹」


あまりにも暗い楓の声に、心臓がドクンと音をたてた。