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重いドアが開いた。入ってきたのは夏樹くんだった。


「よ、水上」


カウンター席からその姿を確認した私は、彼に向かって声をかける。


「夏樹くん、お疲れ様」


夏樹くんの通う南高校は、ときどき7時間授業があるらしい。


「あれ?今日、水上ひとりか?」


「うん。まだ藍ちゃん来なくて」


今日は芦名くんが送ってきてくれたけど、その芦名くんは用事があるらしく、すぐに行ってしまった。


寂しかったけど、私が引き留めるわけにもいかない。


もうすっかり夏になった7月上旬。


この空間も、毎日来ていたら大分慣れた。


「あー、アイツなら補習」


「え、なんで夏樹くんが知ってるの?」


「は?まさか水上、知らなかったのか?俺と藍、同じ学校だぞ」


「え……!?」


なにそれ、ぜんっぜん知らなかった。


藍ちゃんの学校、そういえば教えてもらってなかったからなあ……。


それに藍ちゃん、いつも私服だし。