俺はその日の夜、街へ出掛けた。

組の仕事もあり、ちょっとした視察をと思い、繁華街を通った。

最近、また噂になっている狼月華も見れるかもと。

そんな、少しの楽しみを持ちながら辺りを見回した。

表通りは、大人の街だった。

裏通りは、変わらず、治安が悪かった。

喧嘩は絶えず、闇取引はあるし、ハッキング通りの街だった。

数人に囲まれる人が居てあまりにも可哀想で、助けようと思い、声をかけようと思ったら誰かが遮った。

「お「おい。何してんの?」」

決して大きくは無い体格だが、纏っている雰囲気が只者ではなかった。
俺は、物陰で見守ってみることにした。

「よぉ?お前も、こんな風になりたいのか?それとも、俺らと一緒に殺るか?」

ボスらしき人が、声をかける。

「ん?あぁ。殺るよ。」

「そうか!こっちだ!」

その男は、手招きをしてその人を呼んだ。

その瞬間、その人は無駄の無い華麗な動きでその男を倒した。
 
「ヴウ‥‥お、前っ、、殺るって‥‥」

「だから、お前を殺るんだよ。」


その人が放った言葉はとても冷たかった。


「底辺なお前らに教えてやるよ。本当の殺るって言うのをな?」

その言葉から3分も経たずに、数人の男は倒された。

たった一人の彼によって。

「結局、これかよ。」

倒した人々を見下ろし、言葉を吐き捨てる彼は、なんとも言えないオーラがあった。


満月を背に立つ彼は、カッコ良かった。

フードを深く被り、真っ黒の服に身を包まれている。

満月の光で彼のピアスが照らされた。

‥‥‥‥‥‥‥‥狼月華??

あのピアスは狼月華しか持たないものだ。

それに、月の光で反射した瞳は、赤色だった。


ピースが、一つ二つと集まった。

そうか、今俺は目の前で狼月華の喧嘩姿を見たのだと理解した。

 
殺し屋としての狼月華ではなかったが、それでもとても恐ろしかった。


そして、狼月華は口元だけ微笑んだ。


こっちを見ながら。










まるで、俺を知っているかのように。