「あ」


私は急いで鞄の中を見る。


やっぱり。


私は数学の教科書を、家に忘れてしまったらしい。


そう思った矢先、数学の先生が入ってきた。


今日に限って先生は機嫌が悪そうだ。


背中にヒヤッと冷たいものが走る。


そんな時、隣から声がした。


「先生〜!数学の教科書忘れました〜!
すみません!」


「新城が忘れ物なんて珍しいな。
隣の桜木に見せてもらいなさい。」


えっ、私も数学の教科書なんて持っていない。


1人で焦っていると新城君の机がすぐ隣にあった。


そして、何故か数学の教科書が2人の机の上にある。


「一緒に見よ?」


新城君が眩しい笑顔を向けてくる。


「…ありがと」


なかなかお礼を言うのには慣れてないので、恥ずかしくて顔を新城君から背けてお礼を言った。