「彼女はもしかしてトリカブトを……?」

トリカブトは有毒植物として知られている。毒をわずか0.2グラムから1グラム摂取しただけで死に至る恐ろしい植物だ。経口からわずか数十秒で死亡する即効性があり、解毒剤は存在しない。

「この家の庭に生えている」

窓の外を如月刑事が指差す。外にはたしかに紫の花がたくさん咲いていた。

「霧島先生、山本咲の死は不審死でしょうか?」

如月刑事に訊かれ、藍は考える。その横顔に大河が見とれ、その様子を見ていた如月刑事が不機嫌な顔をし、「自殺じゃないんですか?」と言う原刑事は怒られた。

トリカブト、遺書、手入れされた爪、化粧した顔ーーー……。

「山本咲さんは、恐らく自殺ではありません」

如月刑事以外は、みんな驚いた顔で藍を見つめた。