そう原刑事に怒鳴ったのは、スラリとした長身の男性。彼が藍に依頼してきた人物であり、元恋人だ。

「遺体、見させてもらいます」

如月刑事が原刑事を叱っている間に、藍は和室に転がっている遺体を観察し始めた。

王冠をモチーフにしたネックレスをかけ、淡い色のワンピースを着た二十代ほどの女性だ。顔には化粧がされ、爪もきれいに手入れがしてある。そして、腕や手首に多数の古傷があった。

「これは……リストカットの跡ね……」

藍がそう言うと、原刑事が「ここに遺書も見つかっています。自殺でしょう」と言った。

「もう死ぬしかない。消えたい。さよなら」

原刑事が遺書の中身を読んだ。なぜ死にたいのかは書かれていない。

「彼女の身元は?」

藍が訊ねると、如月刑事が言った。

「持っていた持ち物等から、山本咲(やまもとさき)さんだと判明した。美容学校に通っていた」

藍が咲の遺体をよく見ると、遺体の周りに紫の花と緑の葉のかけらが落ちている。それを見て藍は言った。