「そうよ。別れたのはもう二年になるかしら。お互いすれ違うことが多くなったから」

現場に出かける支度をしながら、藍は言う。その時、藍の手を大河が掴んだ。

「お、俺は……あなたを絶対に幸せにしますから!」

朝子と聖が「きゃ〜!」と言いたげな顔になり、正人は固まった。部屋が少し甘い空気になる。

「何バカなことを言ってるの?早く行くわよ」

藍の一言で、その空気は壊された。



研究所から四十分ほどの場所にある空き家には、黄色いテープが張られ、多くの警察官が行き来している。

「あっ、来た来た!霧島さ〜ん、こっちです!」

如月刑事の部下の原光矢(はらこうや)が手を振る。藍は頭を下げて、テープをくぐった。

「遺体はどちらに?」

「一階の和室です」

空き家は長い間放置されていたのか、あちこちに埃が積もっている。藍は大河に、「家の中も撮影しておいて」と頼んだ。

「霧島さん到着しました〜!!」

原刑事がそう言い、和室の扉を開ける。ふわりと舞い上がった埃に、藍は激しく咳き込んだ。藍だけでなく、部屋の中にいる刑事たちも咳き込んでいる、

「この馬鹿!もっとゆっくり開けろ!!」