「犯行当日は?」

「犯行当日にも、同じ車種の車があの空き家から出て行くのを目撃されているな。しかし、容疑者と考えている人物のものではなかった。レンタカーでもなかったし……」

藍はすぐに上山英二のことだと察する。そして、口を開いた。

「実は、今日あなたが容疑者だと考えている上山英二が声をかけてきたの。彼のマンションでいろいろ話を聞いたわ」

「はあ!?お前、殺人犯かもしれない男の家に行ったのか!?」

普段は静かな口調の如月刑事の声が大きくなる。藍は慌てて言った。

「でも、一人で行ったわけじゃないわ。うちの研究所にアルバイトで来ている河野くんも一緒に行ったの。まあ、彼もあなた同様犯人を上山英二だと思い込んでるわ。食事中もずっとその話でーーー」

「食事!?ま、まさかお前あのバイトと付き合ってるのか!?」

また如月刑事の声が大きくなる。藍が、「違うわよ。ただ誘われただけ」と言うと、安心したようなため息が聞こえてきた。