藍のお腹が音を立てる。おいしい料理に期待をしていた刹那、「あの、すみません」と二人は突然声をかけられた。

「この研究所の方ですか?」

藍と大河が振り向くと、ラフな格好をした男性が立っている。

「そうです。失礼ですが、あなたは……」

藍が訊ねると、男性は「山本咲の恋人です……」と静かに言った。



男性は、上山英二(うえやまえいじ)と名乗った。山本咲と同い年で、高校生の頃から付き合っていたらしい。今は医大生だそうだ。

「咲の解剖をした人ですか?」

「はい、そうです」

藍がそう言うと、「ちょっと俺のマンションに来てほしいんです!どうしても話したいことがあって……」と上山英二は藍の手を掴む。慌てて大河が二人を引き離した。

「突然だし、失礼だってわかっています!でも、咲が殺されたかもしれないって聞いて……」

上山英二はその場で泣き始めた。藍と大河は顔を見合わせる。

「霧島さん、男の部屋に行くなんて危険ですよ!何をされるかわかりません!」