今は好きになっちゃいけない。
好きなんかじゃない。
ただ気になるだけ。いい人だなって思ってるだけだもん。
すると、考える私を遮るように授業開始のチャイムが体育館に鳴り響いた。それを合図に体育館の時計の前に一斉にみんなが集まって列を作りはじめる。前の扉からは授業ギリギリになった人たちがバタバタと流れ込んでくる。
さっき靴箱で会った6組の男子達も急いだ様子で並んでいる私の前を通って列に加わっていく。同時に一人分空けられていた私の目の前も埋まる。4組の体育委員が「前ならえ」と号令をかけた。私は腕を真っ直ぐに伸ばす。
また西原くんの背中に指先が触れそうになる。手を伸ばすと届く距離にいる。このまま「ねえねえ」なんて背中をぽんぽんと叩いたら西原くんは振り向いてくれるだろうか。そうしたら「ん?」ってさっきの表情のまま首を傾げてくれるかな。
