だから、受験って理由をつける。
ズルい。
情けない。
あーちゃんの「本当に後悔しない?」という言葉が現れた。
私はそんなことないと必死に振り払った。
もう傷つきたくない。西原くんのことはずっと大切な人と思いたい。
受験が終われば私たちはバラバラになってもう会えなくなる。この恋がいくら幸せなものになったとしてもあと1年という期限が付き纏う。苦しい思いがいつか訪れると分かっているから、西原くんのことは好きになっちゃいけない。
私は地理の時間中自分に言い聞かせた。
そして、いつも通り2時間目が終わるチャイムが鳴った。
一斉にみんなが立ち上がり、委員長の号令に続いて「ありがとうございました」とお辞儀をする。
私は体育館シューズと筆箱を持って、あーちゃんとさっちゃんと3人で教室を出る。2人がさっきの地理のさんちゃん先生の話で笑っている。私もそれに合わせて笑う。西原くんの事を探してしまわないように二人の話に集中する。
だけど、1階の私達の館と西原くんの教室がある北館を繋ぐ廊下に来た時キョロキョロと周りを見渡してしまう。体育館の横の廊下を通るとき、体育館の窓から中にいる男子の中に西原くんが居ないか探してしまって、「いつもならもう体育館にいる時間なのにな」と不安になってしまう。靴箱について、先に体育館シューズに履き替えて体育館の中に入ろうとしている男子を見て「やっぱり西原くんお休みかな」なんて思って一人で悲しくなってしまう。
