「……俺さ。花ちゃんのような子、嫌いなんだけど」

屋上に低い声が響く。泣きそうな顔で見上げると、涼太が花を睨んでいた。私でさえも見たことがない表情だ。

「聞こえなかった?俺は、花ちゃんのような相手を見下すような子が嫌いっつってんだ!!」

涼太の声だけが響いた。その後、うつむいた涼太は拳を握るともう一度、顔を上げる。

「……俺は、梨香のことが好きなんだ。俺のかけがえのない親友。だから、梨香のことを傷つけないで」

私は、その言葉に泣き崩れた。涼太は、私に近寄ってくるとぎゅっと私を抱きしめる。

「……ごめん。怖かったでしょ?」

「ううん…ありがとう。てか、涼太は何でここに?」

私は、泣きながら涼太に問いかける。涼太は「嫌な予感がしたからついて来た」と微笑んで答えた。

「どうしてよ…どうして、あなたは桃沢さんのことが好きなの!?」

「梨香は、俺の相談事に良く乗ってくれる。それに、俺が側にいて落ち着けるのは梨香だけなんだ。あんたは、俺の気持ちも知らずに話しかけて来たでしょ?正直、辛かったんだよね。俺、周りに合わす癖があってさ…」

そう言うと、花は傷ついた顔で「2人ともお幸せに」と呟いて消えて行こうとする。

「待って!花!」

私は、花を呼び止めた。私の涙は大分収まっている。

「あのさ、こっちにおいで?」