あれから数週間後の昼休み。私は席に座り、いつものように目の前にいる涼太をバレない程度に観察する。涼太は、男子や女子と騒ぎながら何かを食べていた。

「涼太って本当にモテるよな~!そのチョコ、俺らに分けろ!」

「嫌だよ!チョコはあげない!!」

今日は、男子が浮かれるであろうバレンタイン。私は前日に、生チョコを作った。

刻んだチョコに温めた生クリーム入れ、それを混ぜ合わせ、市販のタルトに流し込んで固めて作っただけの簡易の物だ。

涼太には、放課後残ってもらうように頼んであるし、そこで一緒に告白しようとも考えている。

その時、教室のドアが開き、私と涼太の間で噂の彼女(涼太曰く、ひっつき虫)、花が入ってきた。

花のとある話を涼太から聞いた時、私は様子見にしようと涼太に頼んだ。…彼は少し嫌そうな顔(前ほどではない)をしていたが。

顔を赤くした花は、涼太に近寄るとチョコを渡した。涼太は戸惑いながら笑顔でチョコを受け取る。

「…あー…俺、ちょっと散歩に行って来るわ」

花を一瞬少し嫌そうな顔で見ると、涼太は教室を出ていく。恐らく、花から逃げるために教室を出たのだろう。

次の瞬間、花の目付きが変わった。私の腕を掴むと、屋上へと引っ張っていく。

「ねぇ、桃沢さん。涼太くんとどういう関係なの?」

「涼太と?何って、普通のクラスメイトだけど?」

私は、そう言って微笑んだ。

「ふざけないでよ!私、見たの。あんたと涼太くんが一緒にいる所を!ブスなあんたよりも可愛い私の方がお似合いなのよ!」