「あ、先に食べてて」と食卓に座った涼太に言い、涼太から受け取ったお菓子を片付ける。そして、涼太と向き合って座った。
「…美味しい」
涼太はから揚げを飲み込み、微笑んだ。私も「ありがと」と微笑み返す。
「……ここだと本当に落ち着けるわ…」
涼太は作り笑いではなく、本当の笑みを浮かべる。涼太の友達でさえも涼太の本当の笑顔を見たことは無いと思う。
「そっか…涼太、おかわりあるけどどうする?」
「いや、大丈夫。残りは家族で分けて…梨香、次の土曜日さ。俺ん家、来る?」
涼太は、真剣な顔で私を見た。私は「行こうかな…」とうなずいた。次の瞬間、涼太は向日葵のような笑顔を見せる。普段、かっこいい彼をかわいく思う瞬間だった。
「ねぇ、梨香…相談があるんだけど」
「うん?」
「…最近、他のクラスの子に告られたんだ。もちろん、断ったけど…で、それからその子は色々と俺に話しかけてくるようになってさ……笑顔で話してんだけど、正直辛いから困ってる…どうしたら良いかな?」
私はコップを机に置き、「…何て名前の子?」と問いかける。
「……えっと…名前、何だったかな……そうだ。花(はな)ちゃんだ」
「花か…確か、隣のクラスの……花に言ってみたら?『話しかけないで欲しい』って」
私が言うと、涼太は「いや、それは…」と答えた。
「…それだと、あんたが辛いだけじゃん。まぁいいや。私、何か考えてみるわ」
私が微笑むと、涼太も「ありがと」と微笑んでくれた。