「まったく、梅雨は嫌だねえ」

カウンターで頬杖をつき、気だるそうに足立は言う。

「……おまえ、前に雨が好きとか言ってなかったか?」

半目で彼女を見るのは高木だ。

降り止まぬ雨音に包まれた、ここは足立古書堂である。

「雨はね。湿気は嫌いなの」

その言葉には頷ける。

休日、店番をしている彼女の父親が営むというこの古書堂には、幾百とも言える本が並んでいる。

湿気は本には大敵である。