ただ愛されたいだけなのに




 正紀:無視か。もう俺のことは本当にどうでも
    いいんだな。一年も一緒にいて、そんな
    すぐ心変わりするものなのか。お前は、
    いいよな。俺と別れても他の男に走れば
    いいんだから。


 なんて言い方。わたしは誰でもいいってわけじゃない。そのことはケンカや正紀がネガティブになるたびに何度も言ってきたのに。ひょっとして、わざと怒らせるために言ってるとか? だとしても返事は返さない。
 もしわたしが他の男でいいと思っていたら、正紀なんかとっくの昔にポイしてる。というかそもそも、そんなんだったら正紀なんかとは付き合わない。笑っちゃう。いい男は、正紀以外の男だもん。
 わたしは中身と……ていうか、中身もたいして良くはないんだけれど、なんとなく一緒にいて楽しくて、なんでも言えて、素でいられるから正紀が好き。本物の好きって、そういうことじゃないの?

 返事は返さない。わたしの気持ちなんて、正紀にはまったく通じていない。すべて自分が被害者になるよう捉えていて、弁解するのもおっくうになってきた。

 癇癪持ちだから電話が嫌だって正紀は言っていたけれど、それじゃあただのネット恋愛じゃない。そう言うと今度は「対人恐怖症気味でもあるんだ」と。わたしだって、学校にいたらまるで二重人格のように変わる。