夢 :電話じゃないと話さない。
    わたしメルカノじゃないから。
    できる時間になったら教えて

 正紀は「親父がいるから」や「課題があるから時間がかかる」などと言い訳を並べて電話を後回しにし続けた。最後には、「癇癪持ちだから電話なんかしたくない。だから電話は好きじゃない」とまで今更になって告げられた。けれど一時を回ったところで、わたしの根気勝ち。なんでも自分の思いどおりになると思ったら大間違いよ。

「お前が自分で選んだんだろ⁉︎」
 正紀の声がいつもより三倍ほど高くなっている。まるでソプラノ歌手が音を外しているみたいに。
 最初はいかにも怒ってますというような低い声だったのが、わたしが今回のことでの不満をぶちまけたあたりから、キンキン声のアングリーガールとソプラノ歌手の合唱が始まった。

「なんでわからないんだよ⁉︎ お前なんか——△×○◽︎※⁈」
 えっ? わたしは耳から携帯を遠ざけた。
「なに?」