「わあ、お気遣いどうも。元従業員ということで、控え室のお菓子もいただきに行きますね」
わたしは車のドアを開けた。
「それじゃほんとに、ありがとうございます。家までおくってくれて、ケーキまでもらっちゃって——」
「いいんだよ。健康には気をつけるんだぞ。よいクリスマスを」
去って行く車を見送っていると、さっきよりもヒドく落ち込みそうになってきた。
クリスマスを一人ですごすなんて……。クリスマスだけじゃない。夜も一人ですごしたくない。帰宅しても誰もいなくて、アパートは狭いけれど、心の中は大広間に一人ポツンと置き去りにされているようで、毎日寂しさを感じる。ベッドに入るときなんて、すごく惨めで恥ずかしくなる。
わたし、どうしてカフェ・レストランの仕事を辞めちゃったんだろう。せめてあそこにでも行ってれば、顔見知りに会うことができたのに。
アパートの階段をあがる。街の裏側にあるわたしのアパートは、薬の売人が潜んでいたり、レイプ被害者が転がっていそうなほど薄気味悪い。
