ただ愛されたいだけなのに



 白田の後ろ姿を見送る。広場外の自動販売機に向き合う姿は、なんだか悲しい。こんなに綺麗なイルミネーションがあるのに、そっぽを向く販売機にすがっているみたい。白田と販売機を見ながら、まるで自分と正紀の関係を表しているみたいだと思った。

「ありがとう」
 お礼を言ってココアを受け取る。「はぁ、暖かい」
「あ、車に忘れ物した。どこか、座って待ってて。わかりやすいところにいてくれよ?」
 わたしは、またもや白田の後ろ姿を見送った。路上駐車中の車に近寄る白田。
 噴水を囲む石段に腰をおろした。水が跳ねてこないかチェックしていると、白田がさっさともどってきた。

「せっかくこんなに綺麗な場所に来たんだ」
 そう言って、持ってきた赤い箱を開いた。四種類のケーキが入っている——ご丁寧に銀のスプーンまで付いている。「どれがいい?」

「え? わたし、貰ったからいいです」
「いいからいいから。どうせ俺一人じゃ食べきれないし」
「あ、じゃあ貰ったやつも、持ってきます」
 わたしが立ち上がると、白田に腕を掴まれた。

「あれはプレゼントだって言っただろ?」
 白田がケーキの箱を回転寿しのように回した。
「どれがいい? プレゼントのケーキはショートケーキだから、違うのを選んだらどうだ」

「えー……じゃあ、これで」
 わたしはモンブランを選び、銀のスプーンを受け取った。