わたしは急に、甘えたくなってきた。飽きるまで泣き続けたい——正紀よりも男らしい白田の胸に、飛びこみたい。
ああ、もう、どうしてあんなヤツを好きになったの? どうしてこんなに恋しいんだろう。今は不満や怒りや、嫌なところしか思い出せないっていうのに。
輝かしくライトアップされた噴水広場に到着した。
「降りて、見てみないのか?」
白田が運転席のドアを開けた。「広場を散歩したら気分も変わるかもしれないぞ」
「うぅぅ……寒い!」
わたしは開けられたドアから入ってきた風に、体を縮こませた。「見て来ていいですよ、わたしここにいるんで」
軽い冗談のつもりで笑顔を浮かべたというのに、白田には大きな冗談に聞こえたようで、助手席側に回ってきた。ドアを開けて無理矢理わたしの身体を引きずりおろす。わたしは寒さに悲鳴を上げた。
「俺一人で見てどうすんだ! こーんなに綺麗なんだぞ。見ないと一生後悔する」
白田が楽しそうに笑う。
広場の芝生に足を踏み入れて、腕をひかれながら歩きだした。まるで電気のアート。草の緑にたくさんの飾り付け。クリスマスツリーの中を歩いているみたい。中央に設置されている噴水は、黄色く輝いていて、てっぺんに飾るお星様だ。
「何か飲むか。何がいい?」
「あ、大丈夫です。わたし……」
「遠慮するなって。何が飲みたい?」
「じゃあ、ココア」
