「なぁに言ってんだ! あいにく俺は貢ぐ君じゃありませんからね」
白田の笑顔は、すごく優しい。正紀の自分本位な笑顔とは大違い。笑顔なんて見たことないけど……。
「おいおい、泣かないでくれ。そんなにこの車が欲しかったのか?」
わたしは白田につられて、泣き笑いを浮かべた。わたしが泣き止むと、白田は車を発進させた。
「ここら辺で綺麗なイルミネーションは、ここ以外にないものかね」
白田は前後左右を真面目に確認している。
「さあ……駅のところは鹿とかいました」
「ああ、あそこも綺麗だよなぁ」
白田が窓の外の歩道を指さした。「電気代は市が払ってるんだよ」
「もしかしたらお店の人の自腹かも」
「まぁそういう店もあるな。俺の店は自腹だ」
「えっ、飾ってるんですか?」
「そりゃあ、お前。クリスマスだぞ」
わたしの部屋には飾りなんて一つもないけど。飾ろうと思ってたライトと小さなツリーは、出番なしでダンボール行きだ。
「お?」白田が身を乗り出した。「あそこもライトアップされてるっぽいな」
わたしの家へ曲がる方向とは真逆の前方に、赤と緑と金色に光る、電気の溜まり場が見える。
「ちょっと見てみるか」
白田が方向を切り替えた。
気を使われてることが、手に取るようにわかる。さっきから白田は、沈黙がおとずれないように喋りどおしだ。
