ただ愛されたいだけなのに



「家まで送ってやろうか? 帰りの足がないだろ」
 なんてありがたい申し出だろう。
「大丈夫です。イルミネーション見ながら帰るんで」
「そうか? そう言うなら、仕方ないな」
「はい。じゃあ、お疲れ様です」

 わたしは方向転換して、シャンパン売り場に走った。ピーチ味のシャンパンを二本、浮かれたバカ共が行列を作っているレジへ。
 待たされること十五分、ようやく外へ出れた。飲み物を買ったせいで、かなり荷物が重い。痛いほど冷たい風が頬にぶつかる。駐車場を抜けて、歩道に出る。こんなことなら、やっぱり白田に送ってもらった方がよかったかも。

 吐く息が白い。せめて、大好きな雪でも降ってくれたら気分も少しは変わるのに。
 ふと、足下を見ると、レンガ造りの歩道だってことに気がついた。歩道の横にはジュエリーショップ。ウィンドウにディスプレイされているのは、赤と白のネグリジェを着たマネキン。足下には熊のぬいぐるみが小さなプレゼント箱を抱えている。

 わたしは泣きだした。夢で見た、あの感じ。あれは孤独を表す夢だったの? イルミネーションがあるのに、台本通りのように通行人がいない。ジュエリーショップはすでに閉まってるのに、マネキンを照らすためのライトはしっかりついている。