ただ愛されたいだけなのに



 
     —旅行の準備を整えて—


 ここ三日間、わたしは旅行の準備で休む間もなく脳みそと体をフル回転させていた。バイトの時もこれだけ一生懸命になれていたら、もっと楽しかったかもしれないのに。

 冬休みで一日中家にいる正紀と電話をしながら、下着を入れるダサくないポーチを探しているけど、それがなかなか見つからない。

「ホテルの予約は正紀がしてくれる約束だったよね?」
 ベッドの下の引き出しをあさる。プードル柄の巾着袋発見——ダメ、プードルはかわいいけど、プリントはダサい。
「ああ」
 なんだか上の空の声が返ってきた。
「どんな旅行にしよっか? わたし、そのまま正紀のこと無理やり連れて帰っちゃうかも」
「ハハッ。それはー……まずいな」
 正紀はぜんぜん楽しくなさそう。乾いた笑い声。そして沈黙。
「ねえ、やっぱり乗り気じゃないの?」
 わたしは思い切って聞いた。「嫌なら嫌って——」
「いや、嫌じゃないよ。俺もそろそろチケット予約しとかないとな」
「うん」
 沈黙。
 沈黙三分経過。

 わたしは特大のため息をついた。
「今日はもう寝るね。おやすみ」
「うん。じゃあね」
 はーーー。電話に集中しない彼氏。