「ありがとう。夢、中野さんの作ったおかず、美味しそうだぞ」
 白田が悪びれもなくわたしにふった。
「あ、はい。わたしは、だいじょうぶです」
「斎藤さんも食べて。さっきのだけじゃ、足りないでしょ?」と中野さん。ええ、足りませんとも。
「だいじょうぶです。ちょっと……お腹が痛くて」
 これは嘘じゃない。空腹で痛くなってきた。

「お菓子があるぞ。カップケーキも」白田がチョコバーを振ってみせる。「チョコ好きだろ? この前、ごっそり持って帰ってたの見たぞ」
 なんてこと。恥ずかしさで胃が縮みそう。「いえ、ほんとに……なんか食欲ないので」
 ここにいたら誘惑に負ける——そう思ったわたしは、休憩時間の残り四十分を省略して、田端さんと交代した。どうぞ休憩に入ってくださいと言ったときの田端さんのあの疑り探るような目——わたしが何かとんでもないことを企んでいるのではないかと勘ぐっていた。