隣では、休憩時間が重なった中野さんが、色鮮やかなお弁当を食べている。大嫌いなミニトマトでさえとても美味しそうで、ペロッと横取りしたくなる。
 サイアクなことに、白田が来るのを待ち構えているのか、中野さんはいつもよりスローな動きで飲み物を出したり、お箸を出したり入れたりしている。

 わたしは休憩に入ってから十分もしないうちにランチを終えた。手を洗って、歯を磨こうと流しに立つと、罪深き色男の白田が控え室に入ってきた。いつものようにテーブルの真ん中に、お菓子の入ったバスケットと、どこで仕入れたのか、すこしばかり形が崩れたカップケーキどもを置く。そして一言「皆さんに差し入れです」

 厨房の方から、ランチメニューの香りが漂ってきた。わたしは鼻呼吸から口呼吸に変えた。食べ物のことを考えないように、冬休みに突入した正紀へラブメールを送りつける。

「ほー、今日は手羽先ですか」
 白田の感心した声が聞こえる。
「そうなんです。昨晩、家でちょっとしたパーティをやりまして。わたしは料理を担当したんですが、作りすぎちゃって」
 えへへっと笑う中野さんの声。彼女もやりおる。清純な天使に見せかけて、友人がいて寂しい人生じゃない、アンド、料理ができますアピール。わたしも見習わなくちゃ。

「もしよろしければ、どうぞ」
 中野さんはお弁当箱とは別に、安っぽいタッパーを取り出した。手羽先にウィンナーに卵焼きになんだかよくわからない炒め物が二種類詰まっている。