「チケット買わなきゃ」
 一日で一番楽しみな正紀との電話をしながら、ベッドの上でジャンプをしまくる。破滅的だった通帳にポッと灯りがついたので、わたしは非常に上機嫌だった。

「ああ。もう買うのか?」
「うん。さっき調べたらね、今週中に予約したら三割引きらしいの」
 わたしは両足を壁にくっつけた。腹筋が鍛えられるかも。
「正紀はいつチケット買うの?」

「うーん……俺はまだかな」
「早めに買わなきゃだよ、飛行機のチケットは」
「まあな。でもこっちは割引きとかないし、まだ大丈夫かな」
 あーん、はやく会いたい。
「まーさーき、明日はなにかするの?」

「ああ。明日は友達と遊ぶ予定がある」

「えー」わたしはぶー垂れた。「やだぁ、せっかくわたしも土曜が休みなのにー」

 正紀は愛おしそうにふっと笑った。
「楽しみは会ったときまでとっておこうぜ」

 わたしは正紀のらしくない口調に、膝を抱えて笑った。自分が穏やかでいれば、幸せはこんなに簡単に訪れて、それに楽しみがあると普段以上に幸せになれるんだ。