今日は何時に電話できるのかなぁ……そんなことを考えながら、今月のシフトをスマホのカレンダーで確認する。先月から始めたレストランのウエイター。一日に何度も辞めたいと思ってしまう。そのたびに自分に言い聞かせてきた——貯金をして、正紀に会いに行く——。


 正反対のわたしと正紀が付き合うようになったきっかけは、十八歳になってまもない頃——自立を祝して両親に連れて行ってもらった旅行先でだった。でも、親が決めた観光地はパッとしなくて、想像とかけ離れていて落ち込んだ。

 それでもどうにか楽しもうと、観光地巡りをしようとホテルにパンフレットを大量に持ち込んだ。そこで、正紀と出会った。第一印象はサイアク。野暮ったい髪型に、分厚い眼鏡をかけたシジミのような目で、格好もだらしなかった。代表的なオタクそのもの。ううん、最近のオタクは、むしろかっこいいからオタクに失礼だ。