—理想の女の子になりたい—


 バイト帰りに銀行に寄った。この一ヶ月、遅刻や欠勤は一日もしていない。壊したものの請求もされないはず……。ドキドキしながら通帳記入を押した。

 通帳と睨めっこを続けていると、後ろに並んでいたおばさんがわめきたてた。
「済んだなら交代しなさい!」わたしは「はいはい」と通帳から目をそらさずに銀行を出た。

 お金は足りる。けれどものすごくギリギリだ。来月分を合わせれば少しの余裕が出る。ネガティブな気分が流れてくる前に、届いていた正紀からのメッセージを開いた。


 正紀:ただいま。バイト頑張れ!
 

 ちょうどいい——無駄遣いしないで質素な食事とおしゃれ番長を目指そう。体型をうんと素晴らしいものに整えて、数少ない服を着まわして、日焼け止めの代わりに長袖を着てメイクは薄く、下地のみにする。我慢という試練のあとには正紀に会えるというご褒美が待ってる。

 わたしは一目も気にせず、スキップしながらアパートに帰った。