給料日まであと三日。来月まで働いて唐突に辞めてやる。急に空きが出てしまったら、田端さんの仕事が増えること間違いなし。
今日も田端さんは、鬱陶しいの一言につきた。わたしがトレイを重ねると、向きが逆だと飛んで来る。配膳をするたびに視線を感じ、おまけにわたしは伝票をチキンのクリーム煮の中に落としてしまった。トイレの前でこっぴどく叱られ、お客さんに謝罪を強いられたあとは、白田の説教を受けた。
「あまりこういうことは言いたくないんだけどね、夢」
白田の真剣な瞳はすごく違和感があって、居心地が悪かった。
「君は正社員じゃないけど、一応は仕事なんだよ」
「……ごめんなさい」
わたしは白田の左肩を見ながら謝った。
「目標をたててみよう。そうしたら、幾分かは仕事に身が入るかもしれない」
白田はわたしの肩をぽんぽんとたたいた。
「まぁあまり落ちこむな。よくやれてるよ」
目標は持ってる——正紀と会うという目標を。やだな、白田のことも嫌いになりかけてる。
翌日のバイトでもわたしはやらかした。オーダーの取り間違いに食器破損。田端さんに叱られ、白田は首を振って呆れていたけれど、どうってことはなかった。どうせ一ヶ月後には辞めるんだ。
