「はぁ……もういいわ」
田端さんは厨房に声をかけた。
「この子がオーダーを間違えたんです。三番テーブルのサラダはチーズ抜きで——」
何もこんなところで叱らなくったっていいじゃない? 厨房の人たち皆がわたしのことを見てる。こんなに大きな声で叱られちゃ、お客さんにまで聞こえるわ。
「斎藤さん、厨房の方たちに謝って」
叱られているというよりも、拷問。
「……すみませんでした」
わたしは素直に頭を下げた。
シフト上がり、ようやく解放されると思いきや、同僚たちの目の前でまたもや注意を受けた。
「謝罪をする時は、相手の目を見てしっかりとしなきゃ。声も大きく、はっきりと」
「はい、すみませんでした」
わたしは投げやりに言い、さっさと店を出た。
はやく家に帰りたい。旅費が貯まったら、こんなところすぐに辞めてやる。旅費はいくら必要なんだろう? 飛行機のチケットにホテル代、食事代にそれから買い物もする。着替えの服だって必要だ。新しい服を買おうかな。
