カッコいいとまでは言わなくても、正紀は自分のことを、“マシ”だと思ってる。ダサい髪型も、ダサい服も、ダサい顔も。顔は……仕方ないけど、少しは気を使ってほしいわ。それなのに時々『俺にはいいところがないから、夢は俺にはもったいない』って消極的になる。そのたびにわたしは、数少ない嬉しかった言葉やほとんど短所になる性格を、ありったけのお世辞を使って褒めてあげる。
最近では、それが癖になってきている気がする。ことあるごとに、ネガティブな発言をしては、自分を褒め称えるように仕向けるの。
「いつまで同じところを拭いてるの⁉︎ 終わったなら次の行動に移して!」
田端さんったら、朝からエネルギー使いすぎ。
俺のどこが好き? ってよく聞かれるけれど、はっきりとは言えない。自分でも、どこが好きなんだろうって思うことがあるもん。見た目じゃないことは確かね。あ、でも見た目が悪い方が、浮気とかの心配が少なくていいかも。
とにかく、正紀の消極的で自虐のようなセリフを言うくせに、全く自分磨きをしていなくて、まだマシだって思い込んでいるところは嫌い。よくないところよ。そのくせに、どんな服装の女の子が好きで——とか言われちゃたまんない。ケンカになったのは、それが原因。
