ただ愛されたいだけなのに



 わたしは、告白をする女の子になった気分で、輪になるよう並べてあるパイプ椅子に座った。真ん中に、お菓子や飲み物が乗ったテーブルが置いてある。

 家に帰宅してから限られた時間の中で、男受けを狙った格好に着替えたわたしは、黒のニットにピンク色のタイトスカートを履いて、三十デニールのストッキングを履いている。ここに勇太がいれば、ご機嫌取りのために「かわいいね」と言ってくれるだろう。そういえば勇太は、ようやくわたしのことを諦めたみたいで、メッセージを送ってこなくなった。ホッとした。勇太にわたしは、勿体無いもの。

 お別れ会が始まった。閉会式で聞いたような別れのセリフを、またもや先生たちが語ったあと、それぞれおしゃべりタイムに入った。
 わたしはウーロン茶を紙コップに注ぎ、先生のようすを観察した。先生はすでに亀田さんや他の女に囲まれて、ヘラヘラ笑っている。

 さりげなくそのグループに近寄り、お菓子を選ぶふりをしながら会話に耳を済ませた。

「週末はなにしてるんですか?」
 いつも居残りをしていたガリガリの末吉さんがたずねている。胸元にビーズをあしらったワンピースを着ていて、おばさんがいかにもおめかしをしましたといういでだちだ。わたしの敵じゃないことは確か。