ただ愛されたいだけなのに



「この掃除、いつまで続くのかな?」
 福留さんがやって来た。片手にちりとりを持っている。
「長いですよねぇ。ハウスクリーニングでも頼めばいいのに」
 わたしは声のボリュームも気にせずに愚痴った。だって先生は太めの丸山さんと廊下にいるんだもん。

 もしかしたら先生は太めが好きなのかな? 正紀と——ゲッ、また思い出しちゃった——付き合ってた頃、ダイエットに励んでいた健康体のわたしみたいなのはタイプじゃないとか? 程よい筋肉と柔らかさだと思うんだけれど……。それとも、太め、まぁ、デブじゃなくて、あれはグラマーなのかなぁ。でも背中の肉が段差になるのは、デブなんじゃないの? わたし、しっかり見たわよ。でもでも、もしかしたら今はわたしの方がデブに見えるかも。ジャケットの下にロンTを着ているせいで、スーツがぱつぱつなんだもん。

 あ、先生が戻ってきた。よしよし、グラマーな彼女はいない。そう、そのまま、こっちへ来て——そう、わたしがいる窓の方まで……あーもう! グラマーも先生狙いだ。先生にくっつき回ってる。

「先生って、すごく人気だよね。そんなにかっこいいかなぁ」
 暇そうに福留さんが言う。