「あーん、もうなんでよ……」
マスカラが、まぶたに不自然でいびつなホクロを作った。指先に唾をつけて一生懸命擦り落とす。なんだか少し顔色が悪くなったような気がするけど、眉骨の影だってことにしよう。眉骨なんてほとんど皆無だけど。
朝食はミルク味のキャンディで済ませて、残りの問題はシャツだ。ストッキングが少し伝線してるけど、ももの内側だからよし——そうだ、シャツの上から黒のロンTを着ればいいのよ。これは正式な就職でも、義務教育の学校でもない。ちょっとしたおしゃれだと思えば、屁でもない。
スーツの足下が黒のローファーって変? マヌケ? でもおしゃれ、これはおしゃれなの——。
ギリギリ間に合った。わたしだけヘンテコな格好だけど——髪もとかしてない——クソ真面目にする必要がある? ナイナイ。
閉会式はあっという間に終わった。何の感動もクソもない。何人かは——亀田さんあたり——泣いていたけど。こんな、たかが三ヶ月の付き合いで、しかも先生たちは定期的にクラスを持っていると思えば、別れの挨拶で涙を流すなんて《サウスパーク》を見て泣くようなもの。あれは笑うもの。誰かをバカにしたいとき、ストレスが溜まってる時にはもってこいだ。正紀と付き合ってたときによく見てたっけ——うわ、わたし正紀のことなんか思い出しちゃってる。オェッ。
