最後だからとお隣の福留さんに昼食を誘われた。最後も何も関係ない。
私の返事は「遠慮します」
それならばと、放課後のお別れ会に誘われた。
「絶対来てね!」なんて、行くわけないじゃない。ここは学校じゃなくて職業訓練よ。十五歳の頃に通っていた学校とは違うの。資格を取得して再就職するための「訓練」なの。だから明日は制服じゃなくてスーツ着用なのよね。そういえば、シャツはあったかな……。まさかわたし、捨てたりなんかしてないよね……。
駅前を帰るとき、美容室の前は、チラッとも見ずに早足で通り過ぎた。なぜか急いじゃうのよね。健一さんの前でも、先生の前でも。わたし、イケメンには免疫がないみたい。ほら、今までブサイクとしか付き合ってこなかったから。
アパートの階段を登り切ってから、ポストに光熱費を記した悪魔の紙が挟まれているのに気づいた。見て見ぬ振りをしてクローゼットに急ぐ。シャツ、シャツ、シャツ……あった! なんだ、しっかりあるじゃない。あれ……なにこの臭い……二度ほどしか着用していないシャツが、カビ臭さに犯されている。
わたしはカビ臭いシャツを洗濯機に放り込んだ。夜のうちに干しておけば朝には乾くでしょう。
