「これから学校ですか。がんばって——」
「健一!」
美容室から、この間見たオシャレで綺麗な女の人が、健一さんを呼んだ。
「ちょっと来て、計算が合わないの」
「あー……えっと、それじゃあ」
健一さんはしどろもどろに、片手をポケットにつっこんで、すまなそうな表情を浮かべた。
「また話そうね」
わたしたちは手を振って、お互いの仕事に戻った。わたしは勉強だけど。
修了式が近づき、授業内容はほとんど各自練習になった。関数を使っての表計算や、タイピングの数を増やそうと、みんなやっけになっている。
「ここのやり方はわかりましたか?」
わたしの前の席に座る女性に、先生が自らたずねている。
「ここが分かれば、試験は合格ですよ」
「全然わからないんです」
前の席の女性が言う。
「どうしたらいいんですか?」
「ここはですね……」と笑顔で教える先生。
わたしは完全にきれた。彼は超気分屋。わたしなんて存在していないかのよう。目が合っても何も言わない。わたしは笑顔を浮かべたのに、先生は見て見ぬ振り。わたしを無視してる。金輪際、先生に夢を見るのは禁止。誰がこんな豚。呆れた、サヨナラ。
